近江國の酒と神様のお告げ

明和元年(1764年)頃 滋賀県と三重県の県境近く甲賀忍者の里で知られる甲賀の地で『宝一』と言う名の清酒がひとつの酒蔵で造られておりました。ところが、酒造りに欠かせない仕込み水と酒米との相性が今ひとつ、当時の主は『宝一』の清酒として満足しておりませんでした。主は、どうしたものか・・・良質で酒米との相性の良い仕込み水があればなぁと常々考え悩んでおりました。                           一方で信心深い主は当地の氏神様である『山村神社』を信心し、毎日欠かさずお参りしては神社の境内を掃き清めておりました。そんなある日の晩、主は夢の中で神様のお告げを受けたのでございます。翌朝、朝早くにお告げのあった場所に行きお告げの通り井戸を掘ったところ、今までとは違う良質の水が湧き出てきました。これは氏神様からの贈り物に間違いない・・・・と信じた主は、その年から早速この井戸の水を使って酒造りを始めました。そうするとどうでしょう・・・酒米との相性がぴったりで今までとは全く違う芳醇な香りとともに、たいへん味わい深い素晴らしいお酒が出来上がりました。                  神様のお告げにより出来た清酒 ということで清酒の名前を『宝一』から『神開』にかえ現在に至っており今も『神開』の名で素晴らしい酒造りが続けられております。米どころ近江の近江米と培われた製造技術で藤本酒造では『神開』の他にも色々素晴らしい清酒が醸されています。皆様も是非一度 神様のお告げにより湧き出た井戸水で醸された清酒を味われてはいかがでしょうか。その晩は、ひょっとして神様が夢に現れて何かお告げが聞けるかもしれませんよ。近江國の清酒は 神のお告げに通じる・・・・神話の世界へと夢は広がる。

                    滋賀県酒造組合 事務局長 澤 友二