近江國の酒造りには和歌の韻を感じる

大津市の丸屋町商店街に酒造場を構える平井商店の創業は万治元年(1658年)当時の大津は宿場町であると同時に琵琶湖の湖上交通の要衝であったことから、東北、北陸地方や関東方面から京や大坂に物資を運ぶ物流の中継地として人や物が行きかい、活気に溢れていたと拝察される。『大津酒』という言葉があるほど酒造りも盛んであった。平井商店の代表銘酒は『浅茅生(あさぢを)』である。1677年に後水尾天皇の皇子・聖護院宮道寛親王より賜った和歌『浅茅生の 志げき野中の 真清水は いく千世ふとも くみはつきせじ』より銘々されたものである。酒は滋賀産の滋賀渡船六号(山田錦の親系統)と言う酒米やみずかがみという食米で醸される純米酒を主に醸造している。皇子は後に僧となり園城寺(三井寺)の高僧となられた。三井寺と平井商店とは目と鼻の先、高僧も平井商店の銘酒を味わった・・・・かも と小生の夢は広る。 

                  滋賀県酒造組合 事務局長 澤 友二