『迪(みち)に恵(したが)へば吉(きち)』の上原酒造

1862年(文久2年)創業の上原酒造はカバタ(川端)で有名な滋賀県高島市の新旭町で「不老泉(ふろうせん)」と言う清酒を醸し続けている。この蔵は自噴した井戸水がカバタに常時流れており、この水を仕込み水につかっている。軟水の為 酵母にとってはミネラル等の栄養が少ないので、醪後期に酵母が弱体化し発酵が止まってしまうことがある。そこで始めたのが「山廃仕込」。山廃仕込みの天然酵母は生命力が強いので最後まで発酵しつづけるのでキレのいい酒が出来る、と考えた。乳酸菌・酵母無添加と言う全国的には珍しい山廃仕込みで酒造りを続けている。また、搾りも木槽天秤しぼりで昔さながらの光景を今でも見ることが出来る貴重な蔵である。山廃仕込みの清酒は、口に含むとガーンとくる印象があるが・・・「不老泉」は濃くて旨いが飲みやすいのが特徴。この特徴で全国的にファンがクチコミで広がっている。~蔵の中に息づく酵母を守り神として酒母に迎え、見守りながら酒を醸す~を信念として、これからも伝統を守りながらオリジナルな酒造りを続けていく上原酒造に滋賀の地酒の明るい未来を見つけて気がする。今期の山廃仕込みの酒を楽しみに今宵も一献・・・。『迪に恵へば吉』は『経書』にある言葉。不老泉は肉料理に合いますので近江牛と一緒にお楽しみください。

                                  滋賀県酒造組合 事務局長  澤 友二