東海道50番目の宿場「水口宿」の街道筋に建つ美冨久酒造(甲賀市水口町)の創業は1917年。4代目社長の藤居範行さんを中心に、若い世代が活躍する「明るく楽しい」酒蔵だ。
これまでも麹や酵母の役割、並行複発酵など専門的な知識が無いと分かりにくいとされる「日本酒」の世界を「楽しく」「わかりやすく」解説し、日本酒のファンを増やしたいとの思いから、蔵見学の実施などに積極的だった同蔵だが、2012年に始まった「蔵祭り」は、まさにその思いの集大成。酒造りが一息つく3月末に開くイベントは蔵で働くスタッフ総出で対応、地元の農家や飲食店のブースも年々充実し来場者に大好評。「この日しか飲めない」「この場所でしか買えない」酒の試飲や販売、レアな酒が当たる「ガシャポン」に熱くなる大人が続出するなど文字通り「お祭り」な2日間だ。
もっと酒蔵を身近にし日本酒や日本文化の魅力を広げたい、と21年9月蔵の一部を改装してオープンしたのが蔵カフェ『薫蔵~KAGURA~』。甘酒や酒粕くずもちなど酒蔵ならではのカフェメニューだけでなく、地元産の食材をふんだんに使ったランチには、酒米3種のおにぎりが添えられる。「普段食べ慣れている飯米との違いはもちろん、山田錦や渡船などの酒米を食べられる貴重な機会」だと話す藤居さんは「酒粕をたっぷり使ったかす汁や鮒ずし(ビワますの燻製に変更可)など健康に良いと言われる発酵食を若い世代にも伝えていきたい」と意気込んでいる。 2022.2